鉄道車両に著作権はあるのか(旧バージョン)

鉄道車両のデザインには著作権があるのでしょうか?

鉄道好きの私は、ふと気になりました。

鉄道車両のデザインには、デザイナーなどの創意工夫があるから、著作権があるようにも思えます。

もしそうならならば、その写真・絵・模型などを(無断で)ネットに公開したり、売ったりすると著作権侵害なのでしょうか?

ネットで検索してもほとんど情報が見つからないので、私が考えてみました。

今回は著作権のみに焦点を当てるため、モラルや他の法令については考えていません。

私は法律の専門家でないので、正確性に欠ける面があるかもしれません。

鉄道車両に著作権があるか考える

著作物の定義

鉄道車両に著作権があるかを考える前に、著作物の定義を見てみます。

著作権のあるものを著作物といいます。

日本の著作権法では

思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

と定義されています。

つまり、鉄道車両がこの条件を満たすかどうかを考えればよいわけです。

鉄道車両は実用品である

鉄道車両がもし著作物ならば、文芸、学術、音楽ではないので、美術の著作物の分類になります。

鉄道車両のデザインにはデザイナーの思いや創意工夫があるから著作物では?

と思うかもしれませんが、

鉄道車両は実用性が非常に高い工業製品で、デザインは「機能」により縛られ大きく制限されます。

デザイン性を優先しすぎて性能や安全性が台無しではダメですからね。

よって彫刻や絵など実用性のない美術品と比べると、著作権は認められにくいと考えられます。

次は、裁判ではどう判断されるのかを見ていきます。

裁判ではどう判断されるのか

私が探した限りでは、鉄道車両の著作権の裁判例は見当たりませんでした。

そこで、鉄道車両は「実用品」に分類されるので、実用品の著作権についての判例から類推して考えます。

実用品の著作権について、裁判で主流となっている考えはこれです。

実用品に美的鑑賞の対象となり得る創作性がある場合のみ著作権を認める

簡単にいうと、めっちゃ芸術的やったら著作権を認めるということです。

この考えに従うと、そんな鉄道車両はまれでしょうから、鉄道車両はごくごく一部の例外を除き著作物ではないということになります。

一方、最近では、

実用品でも、作者の個性が現れたデザインならば著作権を認める

という異なる考え方が裁判で採用されました。

この考えに従うと、

例えば、こういう個性的なデザインの鉄道車両には著作権が認められるかもしれません。

量産される実用品のデザインの保護(リンク切れ)

鉄道車両に著作権があるか考えた結果

上記の内容を踏まえると、

鉄道車両には基本的に著作権は認められない。ただし、高い芸術性があるデザインならば認められる。又、作者の個性が表れたデザインでも認められる可能性がある。

と考えられます。

つまり、鉄道車両の写真、絵、模型等をネットに公開しても、販売しても、「基本的には」著作権侵害にはならないということです。

では、著作権が認められる場合には著作権侵害になるのでしょうか?

鉄道車両が著作物となる場合

鉄道車両の写真や絵を(無断で)ネットに公開したら著作権侵害?

鉄道車両が著作物となる場合、それを撮影したり絵にしたり模型にしたりするのは、著作権法上の「複製」に該当します

著作権法の原則では、この行為を無断ですると著作権侵害となるのですが、例外規定がいくつもあります。

特に有名なのが、「私的利用」ですね。

ここで関わってくるのは、「公開の美術の著作物等の利用」という規定です。

屋外に恒常的に設置されている美術の著作物の原作は、それと全く同じものを物理的に複製して公衆に提供したり、販売を主目的として複製する場合を除いて、無断で自由に利用できるという内容です。

公開の美術の著作物等の利用

鉄道車両は位置が固定されておらず、車庫に入る時間帯もあるため、「恒常的に設置されている」かは微妙で、この規定が適用できるかは微妙です。

しかし、ラッピングバスにこの規定が適用された裁判例があります

バス車体絵画事件

このため、ラッピングバスと同様に、鉄道車両にもこの規定が類推適用できると考えられます。

よって、鉄道車両が著作物であっても、その写真、絵、模型等をネットに公開しても著作権侵害にはならないということになります。

又、ラッピング車両の場合は、ラッピングの絵柄にもこの規定が適用できるでしょう。

鉄道車両の写真、絵、模型等を(無断で)売ったら著作権侵害?

鉄道車両が著作物となる場合、鉄道車両を、販売目的で撮影したり、絵にしたり、模型にしたりするのは、ネットに公開するのとは扱いが異なります

著作権法の「公開の美術の著作物等の利用」の規定は適用できません。「販売を主目的とする」場合が除外されているからです。

つまり、著作権法の原則規定がそのまま適用され、

無断では著作権侵害(複製権の侵害)となるので、著作権者(おそらく鉄道会社)の許可が必要となります

鉄道車両の写真や絵は著作物

鉄道車両の写真や絵は、基本的に、作者の思想や創意工夫が加わるため、著作物となります

著作権は、鉄道会社でもデザイナーでもなく、作者に対して認められます

つまり、その写真や絵をコピーして転載するには、基本的に作者の許可が必要となります

無断の場合は著作権侵害(複製権、公衆送信権の侵害)となります。

(この記事内の写真・絵には著作権を主張しないので利用は自由にどうぞ)

結論

最後に鉄道車両の著作権についてまとめます。

鉄道車両は基本的に著作権は認められない。

ただし、高い芸術性のあるデザインの場合は、著作権が認められる(作者の個性が現れたデザインでも認められる可能性あり)。

その鉄道車両について、

著作権がない場合は、

著作権の制限は一切なく、自由に利用できる。

著作権がある場合は、

その写真、絵、模型等をネットに公開するのは著作権侵害にならないが、

販売目的で撮影したり、絵に描いたり、模型等を作ったりするのは著作権侵害となる。

販売目的を除き、鉄道車両やラッピングなどの著作権を気にせず、写真や絵をネットに上げられますね。